田中です。
今年もマウンテンサイクリングin乗鞍に参加してきました。勝てなかったですが、清々しい気分です。今年も乗鞍を目指して集中して鍛え続け、充実した一年を過ごせました。勝った俊介は本当に圧倒的で、まさに新王者に相応しく、天晴です。ポテンシャルを持っているのは良く知っていましたが、今回の乗鞍で才能が一気に開花したように思います。
乗鞍を勝つことは本当に難しいなとあらためて思い知らされました。レースの展開としてはハシケンさん動画で語りつくしたので、改まって書くことも無いのですが、自分向けの備忘録という意味も込めて記事にしました。宜しかったらご一読ください。
・今年の取り組み
昨年の乗鞍をもって自転車競技を止めるつもりでいたのが、全く逆の方向に流れて早一年。今年は足りないものを埋め合わせると言ったものの、結局は長所の強化を重点的に取り組みました。昨年までの3年間は登坂力を強化する練習に注力し、その甲斐あってチャンピオンクラスでも競えるようになりました。
一方で御座なりにしてきた瞬発力は初心者と差のない実力で、故にとれる作戦も限定的となり、強者には勝てないレースが続きました。登坂力の伸びが鈍化した現状を考慮すると、勝つためにはボトルネックの瞬発力を鍛えるのが適切ですが、如何せんそういった練習をする意欲は湧かず。よって選手として褒められた取り組みではありませんが、今年もスペシャリストへの道を選択。
上りにおいては抜けて強ければ小技など無くとも力で押し切れますし、やはりそういう走りにこそ魅力を感じます。とは言え普通の取組では現状打破も出来そうにないため、今年はレース活動も控えめに、ひたすら練習に没頭しました。
生理学やトレーニングの理論を学んだ訳でもなく、コーチも居らず、頼りはパワートレーニングバイブルだけです。練習は裏切らないとシンプルに考えて、まずはCTL150まで上げることを目標に、毎日夢中で自転車に乗りました。勝つため、速くなるため練習するのではなく、如何にCTLを上げるか、パワーを上げるかを追求したその取り組みは、競技ではなくゲームのレベル上げをしている気分でした。
大半がソロ練で時に孤独を感じることもあれど、外乱なく黙々と練習する状況を作り出せたことはプラスに働いたと思います。最近は仙人と呼ばれることがありますが、今年の取り組みは確かにそんな感じであったなと振り返ります。
成果は峠のタイムやパワーだけでなく、競技面でも表れ、徐々に乗鞍制覇を明確に意識するようになります。そして今年は富士ヒルを勝ったこともあり、応援頂いている方々、ライバル達、様々な場面で乗鞍制覇への激励を頂きました。
無名の選手であった昨年とは状況も変わったと思いますし、非常に有り難く、活力を貰えています。しかし反面、期待を裏切りたくないとも思うようになり、レースを走ることが段々と怖くなってもいました。
(乗鞍を勝ったことは無く、挑戦者でしかないのに変な話ですが・・・)
兼松さんが昨年の乗鞍レポートにて苦しい胸の内を書かれていましたが、今なら少し気持ちを推し量れます。練習に没頭し、結果を出し、期待され、いつしか勝ちたいだった気持ちが、勝たなければならない、期待に応えなければならないに変わってしまい、神経質になっていました。楽しむための趣味なのに、これでは本末転倒なので、もっと気楽に考えます。
・レースまで
富士ヒル以降は予想通り不調に陥ったものの、これまで何度も経験してきたことなので、それでも手を抜かずひたすら練習しました。7月後半からは疲労と回復が徐々につり合い、復調の兆しが見え始めます。お盆に入るとほぼ仕上がり、各CPでベストを更新するほど踏めていました。
今年のレース直前最終追い切りは牧馬峠を走り、少し余力を残して7分半372Wと昨年の追い切りで走った大山より12W高いパワーを計測。身体も絞れており、万全の仕上がりに持って来れたと思います。気持ちよく自分のペースで走れば勝機もあるはずと、本番への不安が緩和されました。
・レース前日
出発は9時半頃。圏央道は大渋滞なので、大月までは宮ケ瀬-雛鶴経由の下道を利用し、14時位に会場へ到着。田舎道にも随分詳しくなったので、こういった点でも自転車やってて良かったと思います。到着後はSUNVOLTブースで寛いだり(いつもホンマにお世話になっております!)、休暇村まで試走へ行ったりして時間を消化。
その中で橋本さんや雑賀さん、多峰武練の面々などと会話させて頂き、随分心を落ち着けることができました。夕方頃には宿へ移動。今回から例年利用してきた宿から、俊介が確保していた宿へ変更。ひょんなことで、なんと高岡さんと相部屋ということになり、恐れ多くて緊張していました。
しかしいざ話してみるととても気さくな方で、私のするつまらない質問にも真摯に答えてくださり、勉強になりましたし、リラックスして前夜を過ごすことが出来ました。本当にありがとうございます!20時過ぎには就寝。
・レース当日
2時半に自然覚醒。外を散歩した後に少し入浴、4時に朝食。5時頃からローラー等準備し、5時半ごろからアップ開始。回し始めると足は動けど感触は微妙で、力を入れないと300Wも出ない手応え。標高も高く、最近はロースターター気味なため、きっと本番では踏めると考えるも、一抹の不安を感じる内容でした。三本滝までが実質のアップのため、そこまで念入りなアップは行わず、20分ほどで切り上げ。
6時20分頃に会場入りし、荷物預かりを済ませ、あとはスタート位置で大人しく待機。今年もスタート前の紹介選手に選んでいただいたので、並ぶ手間も無く助かりました。スタート開始5分前位から紹介選手が順次コールされ、先頭へ一列に並びます。これは粋な演出だと思いますし、参加選手としても気合が入ります。整列後、間もなくスタートするところも有り難いです。今年も良い精神状態でスタートを切ることが出来ました。
・レースの展望
最も警戒すべきは勿論王者の森本さん。今年は富士ヒルで私に敗れたことで、乗鞍に向けては例年以上の調整をしてくるはずで、何か対策も練ってくると予想。私がスプリント勝負を回避すべく、どこかで仕掛けることは分かり切っていますし、そう簡単には独走も許してくれません。牽制無しで登坂力の比べ合いをしても良いですが、能力に底が見えない存在。
その他特に警戒する選手は兼松さん、加藤さん、俊介の3名。兼松さんはお盆こそ厳しい減量で不調となっていましたが、好調時には私と差の無い実力ですし、これが最後の挑戦と仰っているだけに本番は合わせてくるはず。
俊介は普段は三味線弾きで力を見せませんが、実力を知っていますし、瀬在能力を考えると非常に怖い存在。加藤さんは今年出たレースをほぼ圧勝しており、皆口をそろえて圧倒的に強いという不気味な存在。ただ、これまで何度か走った印象としては走りが荒いので、乗鞍のコースを考えると、恐らく自爆?とも予想。あとは最近とんでもパワーを出している嘉瀬君、お盆走った際に強さを見せつけられた梅ぴょん等も気になる存在。強豪が集結するレースなので、強い選手をあげると枚挙に遑がないです。
富士ヒルで競った星野君が不在なのは、残念ではありますが、助かります。レースのカギは加藤さんにあると思っていて、破滅的なペースで集団を牽引してくれたら皆疲弊しますし、出来るだけ厳しい展開を作ってくれることを期待。ただ、三本滝までにそれをしても効果がありませんが・・・
作戦としては位ヶ原までは足を温存し、最後の10分強を全開でもがくシンプルな計画。登坂力では集団内でも優位と思っていたので、全開でTTすればきっと勝機もあるだろうと考えていました。そのためにお盆は10分ほどの峠で追い込み続け、ペーシングを体に刷り込んでおきました。
・レース本番
レーススタートし、間もなく加藤さんが一本牽きを開始し、その後ろにピタリと森本さんが入ります。スタート前に集団内で身を潜めると言うてたんは何やったんや!笑 時折誰かが飛び出したりするも、三本滝まではほとんどローテも無くこの状態が続きました。この時点で加藤さんが優勝争いに加わることは無いと思っていました。(これで勝つようなら最早何してもお手上げな強さです)
それでもハイペースという訳ではなく、周りの選手の様子を観察するにどちらかというと例年より遅いペース?に思いました。私自身には余裕を感じず、足を使ってしまっている感触。前に上がりたくとも踏まないとポジションの維持も難しく、今日は厳しいレースとなることを予期します。
しかし最初踏めなくとも徐々に足が動き出す経験を何度もしていますし、このために一年頑張ってきたので、何とかなると心を落ち着かせます。普段はネガティブですが、レースでは割とポジティブです。レースはフィジカル5割、メンタル5割と思ってます。
そうこうしていると三本滝を通過し、少しずつペースが上がり始め、徐々に勝負に絡む役者たちが露わになっていきます。本格的にレースが動き始めたのは、ゴンドラ区間を超えて少し先のS字カーブで大久保さんがペースアップしたところからと思います。
直前に集団の様子を観察されており、誰も仕掛けない状況に業を煮やしていそうな雰囲気に見えましたが、案の定。森本さんがこれに続いたので集団も追わざるをえず、私も続きます。急坂なのでダンシングで、と腰を上げると足に焦げ付く感触。
それだけ強烈なペースアップかと周りを見渡すと、有力どころは淡々とこなしている様子。もうこれは前に出てアタックとか、ペースを作るとか言ってられる状況ではなく、以降はなんとか喰らいつくべく防御一辺倒で耐え忍ぶレースに。そして冷泉小屋手前の急坂で俊介がダンシングで加速。本人はアタックのつもりは無かったと言っていましたが、十分に強烈で私は黄色信号、振り返ると加藤さん等有力選手が千切れていくのが見えました。この動きで集団は俊介、森本さん、嘉瀬君、梅ぴょん、私の5名にまで絞られました。様子を観察すると、梅ぴょんは結構きつそうですが、あとはまだまだ走れそうな様子。
もう勝ちは無いと悟っていました。今年も敗北か~と、案外冷静に考えていました。あとは順位をどこまで上げられるか、離されないかの勝負なので、なるべくペースアップをさせないように前目前目に展開し、レースを落ち着けさせる動きに徹していました。それでも俊介、森本さんのローテが来ると強烈で、足がジワリと削られていきます。特にこの日は俊介が強く、余裕度や踏みっぷりから他の選手とは頭一つ抜けているというのが分かりました。絶好の状態で闘ったとしても、勝てる気のしない強さ。
そして位ヶ原を過ぎ、嘉瀬君の長く強烈なアタック。幸い比較的斜度の緩い区間であったため、番手にいた私はすかさず距離を詰め、ツキイチで必死に耐えて何とかこれをクリア。しかしもうこの動きで無い足は尽き果てました。そして間もなく俊介がカウンターでアタック。俊介⇒森本さん⇒嘉瀬君⇒梅ぴょん⇒私の並びで走っており、この動きに嘉瀬君が耐え切れず中切れ。私も梅ぴょんも埋める足は無く、ここで優勝争いから脱落。
嘉瀬君からも少し遅れ、梅ぴょんとはパックで走っていたような。(そんな梅ぴょんはいつの間にか消えていました)そこからは嘉瀬君をターゲットに何とかペースを維持。20mほど前方で先頭2名が走っているのが見え、暫くして森本さんも千切れるのが見えます。
新たな山神が誕生する瞬間を目撃しました。森本さんの背中には何処か哀愁が漂っていました。千切れたことで森本さんのペースもガクッと落ち、暫くして嘉瀬君が追いつき、私も合流。その後は敗者3人で上げもせず(上げれもせずか)、基本は私がペースを作りながらゴールを目指します。途中で森本さんとあれは強かったな~とレース回顧をしたり、バイクカメラに負けましたと宣言したり。
そして大雪渓を通過し、嘉瀬君がドロップ。順位は違えど、去年のトップ3の面々は今年も変わらずでした。私としては表彰台に残れて良かった・・・、と思う気持ちが大きかったです。残り300mほどに差し掛かり、遠くの方で俊介がゴールするのが見えます。2位も3位も一緒なので無駄な争いはせず、森本さんと並走しながら走行。(既視感)スプリントするでもなく、お互いのペースで走り切ってゴールしました。
・レース後
県境付近で停止していた俊介と合流し、勝利を讃えます。ホンマに強かったですし、正直に言うと何度走ろうとも勝てる気のしない走りでした。前々から潜在能力に恐ろしさを感じていましたが、大舞台でその才能を一気に開花させたようにみえます。大舞台での勝負強さとその実力に感服しますし、天晴です。
昨年は警戒していないところから3位に入り驚きましたが、今年は何の驚きもなかったです。まだまだこれから伸びそうな気配のある俊介と、全てを出し尽くしてしまったように感じる私。今後、この形勢を変えるのはもう難しいように思います。そして嘉瀬君と梅ぴょんも間もなく到着。
時代交代を感じるHC界ですが、今年は更に若い世代が台頭を表してきてました。30代後半と20代前半の間に挟まれた我々の世代は、一度も時代が来ず終わるのか?笑 まあ俊介や星野君が居る限り、それは無いと思います。
ゴール後はインタビューや記念撮影、久々に会う選手達と雑談したり楽しい時間を過ごします。それぞれに思うところはあれど、皆解放感に溢れたいい顔をしており、この空間が好きです。
来年もまたこの場に帰ってきたいなと思えます。今年も俊介と下山し、途中で森本さんとも合流、レースを振り返ったりしつつ観光センターへ着。その後はとれたまさん、わなみさん、ノブさんも混じり、アビーロードで昼食して表彰式へ。今年もこの場に立てたことを誇りに思いますし、夏が終わったなと少し寂しい気持ちにもなります。
森本さんや橋本さん等と雑談したりしていたら結局シリーズ戦の表彰まで見届けてしまい、14時過ぎまで会場にいました。
旅館へ戻ろうとした際、本当に偶々Team Green Road御一行と遭遇!まさかの集合写真に加わらせて頂き、しかもセンターを陣取り記念撮影。
去り際に兼松さんと握手をした際には、少し込み上げてくるものがありました。兼松さんが乗鞍に懸けてきた想いを知っていますし、今年でそれを終えると仰っているので、やはり寂しく思います。私の一番の目標で背中を追いかけ続けた存在で、何かと気にもかけて頂き、今の私に至るに最も寄与した選手です。この時ばかりは、恩師が勝てなかったのなら、せめて私が勝ちたかった、と悔いたりもしました。(独りよがりですいません。)バトンをもらったと受け止めたので、来年も乗鞍へ挑戦致します。
・統括と今後
レースを終えた感想としては、冒頭に書いた通り、悔しさはあれど清々しい気分です。持てる力を最大限使いましたし、全力で練習に取り組んで乗鞍を闘えたことを誇らしく思えるからでしょう。期待したよりも強くなれなかったのは残念ですが、プロではないので、結果が伴わなくとも自己満足出来ればそれは成功です。ただ、応援いただいた方々には、吉報を届けられず、申し訳ないと思います。
今シーズンは3戦と例年の半数以下のレース数となり、勝利は富士ヒルの1勝のみ。しかし今年も様々な体験や出会いがあり、悩むこともあれど概ね楽しい一年でした。昨年乗鞍を勝っていれば自転車競技をやめていたと思うので、負けて本当に良かったです。今年は乗鞍を終えた翌日だというのに気持ちは切れず、例年やってしまう暴飲暴食も回避したので、今後は更に体を絞り調子を上げつつ、秋までは各地の峠攻めをします。実は秋レースにこっそりエントリーしていたりもします。
その他グルメライド、ロングライドなど自転車でやりたいことは無数にあり、熱は一向に冷めません。とりあえずゆかいな仲間達と超高強度グルメライドとかしたいなと思ってますので、近日中にお手合わせ願います。そして来年に向けては取り組むべきことはまずは2つあると考えています。
1つはちゃんと上ること。今年後半はL5域の10分もがき等を中心に取り組み、LTパワーでの峠リピートや長い峠の練習をせず、ローラーのメニューもしないで、基礎を疎かにしていた様に感じます。結果としてパワーの上限は上がり、数値上は成長したのですが、長い上りをこなす持久力であったり、その中での上げ下げを行う能力は昨年よりもやや苦手になった気がします。秋シーズンからは朝ヤビツや大山リピート練といった基礎的な練習も再開し、長く上れる体を再度作っていこうと考えてます。
そしてもう1つは人と走ること。ケンボーさんが自転車休業をした春以降はほぼソロで走るばかりで、誰かと競う、合わせる経験が足りていなかったように思います。幸い近所には加藤さんや、今回乗鞍で年代別優勝し、成長目覚ましい、りょう君が住んでいたり、ヤビツではMacchoiさん主催の百参るずの会に猛者がこぞって参加していたりします。彼等の輪に加えてもらうなどして、これからは人と練習する機会を増やしていきたいと考えているので、何卒よろしくお願いします。誰かと切磋琢磨することで成長することもあるのではと思います。結果として、彼らが私の手におえない怪物達になる気がしてなりませんが、それはそれです。(俊介もそんな感じ)
(そういえば加藤さんはグランペール入隊予定なので頼もしい限り!)年々伸びが鈍化し、残されたものは多くは無いようにも感じますが、それを何とかしてやること自体も楽しいので、今後もまだまだ頑張ります笑
それに速く走れずとも自転車は最高に楽しい趣味ですし、長く楽しんでいけたらと思います。そんなこんなで、これからもよろしくお願いします!
では。
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