第20回JBCF 栂池高原ヒルクライムE2クラスタ優勝 大島

20JBCF 栂池高原ヒルクライムE2クラスタ優勝
大島

本年度からグランペールサイクリングチームで御厄介になっております大島浩明と申します。昨年縁あって監督や田中選手と知遇を得て、現在こうして最精鋭の山岳スペシャリスト集団の末席に加わることができて身が引き締まる思いでおります。未だ至らぬ身にあっては他のメンバーとの力量差を思い知らされるばかりでとんでもないチームに入ってしまったと頭を抱えているところですが、やがては自分も山岳王のチーム名に恥じない一廉のクライマーになりたいという一心で、日々トレーニングに勤しんでいます。どうぞ宜しくお願い致します。


今回グランペール移籍後のJBCFヒルクライム初戦として臨んだ栂池高原ヒルクライムE2で、念願叶って優勝を仕遂げることが出来ました。ステータスの高いJBCFのレースでヒルクライム初優勝を飾れたことはまずもって非常な名誉であり、その記念として僭越ながらレースレポートを認めさせて頂きます。

本年度のJBCFのヒルクライムで出場を予定していたのは栂池、宮田、赤城の3戦のみ。ヒルクライムにしか出場しない自分が本年度中に現在のE2から昇格してE1のヒルクライムに出場するためには、栂池か宮田で3位以内に入らなければいけない。しかし宮田は今回全日本でE2栂池を見送ったCOW群馬星野選手とJBCF初戦の栂池でE3から昇格確実の竹芝宿谷選手の2名で昇格枠が2つ埋まってしまう可能性が高く、残り1つの枠を奪い合う厳しいレースになると予想される。そうなると初戦の栂池で確実に3位以内一発昇格を果たしておきたかった。

 栂池E2のレーサーリストをチェックすると、自分の知る限りでは中ボス6名、ラスボス2名といったところ。これまで主戦場にしていたホビーエキスパートでラスボスの人数が入賞枠を下回ることなどまず無いので、これはチャンスと言って良い。手堅く走れば表彰台は狙えるだろうし、展開次第で優勝の目も有る。

 想定する勝ち方としては、序盤は集団内で逃げを見張りながら脚を温存、1kmの平坦が終った頃からペースを上げて後続を突き放し、そのままゴールまで逃げ切る。終盤に勝負の賭かった集団で頭を取るのは苦手というかそんなストロングな真似想像もできないのでここは早掛けで勝負。終盤までに全員千切れれば自分の勝ち、一人でも耐え切られたらそいつの勝ちで良い。




 E2出走者は68名。スタート直前に最後尾に並び、要注意選手の位置を全て確認する。レース開始。まずは2.3kmの激坂区間。早速紅白?の選手(失念)が先行してそれを集団が追走する。自分は後方から少しずつ番手を上げ、1km位で難無く追走集団先頭に収まった。最初の先行はすぐに吸収されたが、かなり距離が開いてSpaceの選手が1名逃げている。ノーマークの選手だったし彼我の速度差的に急いで捉える必要も無さそうだ。平坦が終る辺りまでは一人で泳いで消耗してもらおう。

 平坦区間手前の直線で暫く先頭を牽き、平坦区間に入るとすかさず先頭を譲る。後ろにいた顔見知りのSkyrocketsの若者を煽ってハイペースで牽いてもらう。坂が始まりペースが落ち始めたら再び自分が前に出てペースを維持する。先頭との差が少しずつ詰まっていく。余裕が有ったので自分が牽きっぱなしでも構わなかったが他の選手に後ろで寛いでいられても困る。嫌がらせ目的で少しペースを落して横柄な手振りで先頭交代を促す。するとまずいことに自分の真後ろが筧五郎さんで、「お前はそのまま行け」と叱られてしまった。後ろを確認せずに横着するからこういう目に遭う。五郎さんに無礼な態度を詫び、ここから一本牽きを敢行する。先行のSpaceを一気にオーバーテイクし、5km手前辺りで自分がE2の先頭に出た。

 先頭に出て数km、後続を全員振り切るつもりで一度も振り返らずにひたすらL5走に没頭していたが、真後ろの走行音が消えることが無かった。後を確認すると、付いて来ていたのは意外にも序盤一人逃げのSpace長塚選手。彼の後ろには誰も見えない。自分と長塚選手の2人逃げになっていた。とりあえず一度先頭を譲って観察するが、前に出ると少々ペースを落としてくる。話し掛けると「もう2位以内は堅いでしょうから」とのこと。なるほど。これは協調して走っても自分にメリットは無いと考え、再び先頭に出て単独走を続行することにした。

 10kmを過ぎると平坦や緩斜面が目立つようになる。振り返ると依然として長塚選手がコーナー1つ分位後ろに居るが追い付いてくる気配は無く、これなら却ってペースの目安になる。FTP走を維持して着々と距離を消化していく。林道を抜け、13km地点ロープウエイ乗り場の直線でもう一度確認すると、長塚選手との間のギャップが200m程まで開いていた。この段階で自分の勝利を確信するに至った。

 ロープウエイ乗り場からゴールまでの残り距離3.7kmは自分のホームコースである筑波山不動峠と同じなので、距離感は身体に染み着いている。ここからGarminのラップを切り直し、いつもの不動峠TTをイメージしてラストスパートに掛かる。さすがにこれだけ消耗し切った状態でTTをすることは無いが、あと何分程度この苦痛を我慢すればよいか位は想像できる。後ろからSpaceが迫ってくる辺りも良い具合に不動峠あるあるを演出してくれている。残り2kmの看板からヘアピンを4つ過ぎて残り500m。長塚選手が終盤にかなり差を詰めて来ており些か肝を冷やしたが、ゴールまでの残り距離は僅かでもはや追い付かれる心配は無い。詰め切れない程度の差を維持して落ち着いて踏み切ってゴール。結局長塚選手には僅か3秒差まで迫られてしまったため、折角練習してきたガッツポーズを披露する余裕は無かった。



 自分は目標強度を維持しながら独り淡々と走るのが滅法得意だ。レース時間に応じて持続できるNPは把握しているし、心拍数、出力と主観強度を比較すれば補給のタイミングも誤らない。エキスパートでも先頭集団から千切り捨てられた後にペースを崩さずにタイムを狙うことができる。実際に、過去1年のヒルクライムレースで自分より先に集団から脱落した選手に追い付かれたことは只の一度も無い。つまり今回面白アタックとかではなく必然的に単独走に至った5km地点で、殆ど自分の勝利は決していたと言える。今回は正しく自分の持ち味である独走力を生かす形で会心の勝ち方が出来たと思う。


 シーズン後半は宮田E1、乗鞍チャンピオンクラス、赤城E13つに出場を予定している。字面を並べただけでうわあっとなってしまうような修羅場だが、次戦宮田までまだ1ヶ月以上、それだけあれば心掛け次第で更に力を付けることも可能だろう。ゆめ抜かり無く更に厳しいトレーニングを課し、最高レベルのヒルクライムレースでも力を示していきたい。

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