第14回Mt.富士ヒルクライム主催者選抜クラス第8位 大島


昨年の栂池E2優勝以来2回目の投稿となります。こうしてまたレポートを認めるに値する内容のレースが出来るようになったことを嬉しく思います。


先にアップされた4位入賞の田中君の記事や他の入賞者のブログ等で先頭集団の熱いバトルが詳しくレポートされていますが、華やかな先頭集団の遥か後方で8位以内入賞圏の争奪戦もひっそり行われていたことを記しておきたいと思います。


富士ヒル主催者選抜は昨年に引き続き2回目の出場となります。前回は珍しく晴れがましいスタートで些か動揺していましたが2回目ともなると慣れたものです。音に聞こえた強豪クライマー勢と何処まで勝負出来るかを楽しみに、リラックスした気分で準備を整えスタートを迎えられました。

レーススタート。去年のパレート走行を想像していたので気が緩んでいましたが、今年はパレードが既に速い気がしました。ちょっとキナ臭さを感じながらも集団後方で計測開始地点を過ぎると、料金所前からいきなりハイペース。前方に有力勢が集まってペースメイクをしていたようです。後続に対する殺意が明らかな先頭ローテ組のハイペースに危機を感じ私も慌てて前方に出ようとしましたが、集団が縦に伸びていて中々番手を上げられません。もたもたしている内に一合目を過ぎた辺りで脚の揃った先頭集団に置き去りにされてしまいました。

気付いたときにはかなり距離が空いていたため先頭集団の面子と人数は確認出来ませんでしたが、遠ざかる列車の掛かり具合や周りに居ない優勝候補の顔ぶれをカウントして血の気が引きました。前のあれは恐らく入賞列車だ。ここは意地でもブリッジしないとレースが終わってしまいます。

周りの有力選手に声を掛けて追走を試みましたがローテーションが綺麗に廻りません。先頭集団との距離を保つように踏んでいると突出してしまいます。止むを得ません、もう勝負所と覚悟を決めて単独追走を決心しました。オーバーペース気味で踏み続けて一旦先頭集団に届きかけましたが、まずいタイミングで大野選手が先頭最後尾から離脱。道連れが出来るという安堵から気が緩み、大野選手に追い付いた頃には先頭集団はまたしても遠ざかってしまいました。

 大野選手とその少し先で先頭から離脱した鳥飼選手をパスして追走を続行しましたが、人数が絞られて身軽になった先頭集団とオーバーペースの代償で衰弱気味の私とでは速度域が違い過ぎます。給水所手前の見通しの良い直線に入って先頭が見えなくなったところで、もはや先頭集団への合流は不可能と悟りました。

 三合目あたりで後ろを確認すると、数秒差で武田選手を先頭に数人が付いて来ていました。ここで脚を緩めて後続と合流すべきか、それとも遠ざかる先頭集団を追って独走を続けるべきか迷いました。更に言うとここから大沢駐車場までの4km程は吹き下ろし気味の向かい風。少なくとも大沢のヘアピンを過ぎて集団有利が薄れる追い風区間まで武田選手等を相手に逃げ切れるのか?

 この時私は自分の現在の順位と8位の決まる入賞ラインの位置を正確に把握していませんでした。もし入賞ラインが私か後方の武田グループに有ったら、私が合流したらむざむざ自分の入賞枠をシャッフルすることになり、そのままゴールまで行ってしまうと人並み外れてゴールスプリントが貧弱な私の入賞は困難になります。一方入賞ラインが前方に有った場合は、それこそ武田グループで温存している場合ではなく、先頭集団から零れた選手をパスして番手を上げる可能性に賭けて力の限り追走を続けるしかありません。従って、このまま単独走を続けるのが最も入賞の可能性が高いと考えました。

 単独走の覚悟を決めたところで、丁度遠くに1人前走を目視しました。遠過ぎて誰かは分かりません。これは有り難い。後続を気にしながら走るより、遠くの前走とのギャップを目標に走る方が精神的負担は格段に軽くなります。あとは決して焦ってペースを崩さないように出力と心拍に注意して、何とか後続とのギャップを保ったまま大沢駐車場に辿り着きました。

 ここに至っても私を捕まえられなかった武田グループはもはや脅威とは思いません。前走のキャッチに目標を切り替えます。大沢のヘアピン手前で僅かに詰まったとき前走が宿谷選手だと分かりました。大首級です。俄かに追走に力が湧いてきましたが、想像以上に差が縮まりません。山岳スプリット区間で20秒は空けられています。ヘアピンを過ぎて奥庭駐車場のピークまで結局詰めることは出来ませんでした。しかしまだ諦めません。ギャップを埋め難い追い風の高速区間で体格に物を言わせたフルパワー巡航。最初のトンネルで何とか宿谷選手に追い付きました。ここで宿谷選手に声を掛け我々の順位を訊くと、78番とのこと。入賞ラインは私でした。

 未曾有の大戦果に手が届きつつあることを知った嬉しさでさっきまでの闘争心は完全に消え去りました。後ろを確認しても追走は見えません。あとは順位確定のために宿谷選手と全開ローテで平坦区間を駆け抜けます。テンションがおかしくなって白目剥きそうな位の強度でしたが、平坦が終って坂の上にゴールが見えたときは、些か寂しさを感じたのを覚えています。

 残す所はゴールまでの登坂のみ。もう宿谷選手と競う気は皆無になっており、登り口でアルカイックスマイルを浮かべつつフロントをインナーに落としたところで「後ろ来てる!」と宿谷選手。うおおお!後ろを確認する間も無くインナーのままゴールまでフルもがき。それでもあっさり宿谷選手に捲られて8位ゴールでした。後ろを見ると本当に数秒後に武田選手が突っ込んできて、最後に気付かなかったら確実に差されているところでした。

こうして一緒のステージで表彰してもらってはいますが、先頭集団の6人とそこに後半まで参加していた宿谷選手と、レースを通して1ミリも先頭の展開に絡めなかった私とでは、同じレースを走っていた気が全くしません。仮に先頭集団に加われていたとしても碌な目に遭わなかったと思いますが些か心残りです。



 昨年の9月、トレーニング中の落車で大腿骨を複雑骨折しました。思う様に捗らないリハビリとどん底に落ちたフィットネスレベルの回復に追われ暗澹とした気分で過ごしたシーズンオフ中、こうして富士ヒル主催者選抜クラスで入賞を争う走りが出来るとは想像も出来ませんでした。以前のパフォーマンスを取り戻すには大変な苦労を要しましたが、それもこうして思いがけない好成績で報われて満足しています。これまで抱えていた骨折に纏わる諸々の憂鬱は今回の大戦果で完全に過去の物とすることが出来たと思います。

今シーズンのヒルクライムレースはここからが正念場です。実業団HC4戦を経て、8月末の天王山乗鞍に合わせて更に仕上げていきます。今回の結果を足掛かりに昨年よりも更にハイレベルのヒルクライムをお目に掛けますのでご期待下さい。





















有言実行

コメント